不可逆性歯髄炎の歯髄を保存できる可能性?

冷たいものに激しくしみてそのあとの痛みが長く続いたり、何もしていなくても痛んだり、夜中も寝れないくらい歯が痛んだりした時、人は神経を取らなければならないと思うだろう。

しかしながら、実際にそういう状態の時に本当に歯の神経には重篤な炎症があるのか?といえば、実際はわからない。

わからないから歯科医院に行くのだが、その歯科医院で歯髄の検査を行う。行われる検査はCold TestやHot test、EPT(電気的歯髄診)なのだが、これを行なっても実際に歯髄に重篤な炎症があるかどうかは実際のところはわからない。

歯髄の生き死にはそこに流入する血液の流れがあるかどうか?で判断できるが、そうした検査を臨床的には行うことができない。

したがって未だに、

歯髄診査に反応する=刺激に反応するのに足る十分な血流が供給されているに違いない

というロジックでレントゲンとともに歯髄の状態をGuessしている。

不可逆性歯髄炎で症状があるもののうち、40%は実は抜髄をしなくても済むような歯髄の状態であったりとか、いや16%しかそういう状態のものはなかったりしたとかいう歯髄の病理組織の研究があるが、いずれにしても最終的にはそれを判断するためには神経を取らねばならず、取ってその結果、何もありませんでしたでは臨床的に何の意味もなさない。

ここは歯科医師の間に存在するまさにジレンマとなっている。

歯髄を残したはいいが、術後疼痛が結局発生して抜髄になったり、抜髄を勧めればあの先生は神経を取りたいんだと批判される。

一番いいのは、不可逆性歯髄炎で症状があると言われた症例でも神経を残すことができないのか?というところだろう。

 

 

 

 

術前に深い虫歯があり、臨床的にも不可逆性歯髄炎であると判断された歯に、なんと抜髄をせずに歯髄保存療法(Partial Pulpotomy)を行なって、2年後にどうなったのか?という興味深いstudyが今月のJOEで発表されている。

治療後2年経過時に、

自発痛がない

違和感は術後数日

痛みなく歯が機能していること

術後にCold testして反応正常であること

歯茎に腫れや出来物(Sinus Tract)ないこと

レントゲン的に根尖部に病変が見られないこと

を成功の条件にしている。

患者の年齢は平均が30歳。患者数は50人。2年後にリコールに応じた割合は90%以上と高い。

治療術式は

After clinical and radiographic examination, the tooth was anesthetized using lidocaine 2% with epinephrine 1/80,000 (Septodont, Alling- ton, UK), and, subsequently, it was isolated using a dental dam. Then, the tooth surface was disinfected with gauze soaked in 5.25% sodium hypo- chlorite (NaOCl) before caries excavation. The cavity was prepared using a sterile high-speed fissure bur under water coolant, and caries was excavated using a large slow-speed round bur. The exposed pulpal tissue was amputated using a sterile round bur in the high-speed handpiece to a depth of 2–3 mm. The pulp wound was flushed with 2.5% NaOCl, and the bleeding was controlled by placing a cotton pellet soaked with 2.5% NaOCl over the pulpal wound for 2 to 3 minutes and repeated for another 2 to 3 minutes if required. Root canal therapy was initiated in cases in which hemostasis could not be achieved. Once hemostasis was confirmed, each tooth was randomly allocated MTA or Dycal.

ラバーダムしてカリエス除去し、露髄して止血ができたものに関してのみ、歯髄を保護する治療を試みている。

結果、2年後の予後は

MTA・・・22/26=85%

Dycal・・・10/23=43%

であった。

この著者は同じような研究をそれでは、断髄(Full pulpotomy)を行なっている。

そちらの方が成功率が93%と高く、筆者はその理由を患者に13~20歳の若年者が含まれていること(本研究には含まれていない)、断髄したためより多くの炎症を取りされた可能性を持ってその違いを考察している。

さて私はこれをどう捉えたか?であるが、結局術中に止血できたもののみを歯髄を残すという判断している。

止血ができないものに関しては、抜髄している。

止血の定義や何回それを試みるかというのは実に曖昧で、世界的にこれだ!という正しいコンセンサスはない。

またPartial Pulpotomyという治療の性質・中身について理解がなければ、なんでもかんでもMTAで蓋をすれば治ると勘違いされかねない。

ただし一つの治療の選択肢としてこうした治療を術前に提示することは患者さんに取って有益かもしれない。が、いずれにしてもタイムマネージメントが必要な治療術式であるということには変わらないだろう。

そのあたりのことを、1月からのセミナーで話したいと思います。