抜髄・根管治療後の修復治療

50代黒人男性。

同級生の患者さんだったが、ファカルティが私に患者を配当し直してきた。

主訴はなし。

#18の頬側に大きな根面カリエスが見られる。

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前医(同級生)は修復不可能と判断。抜歯を宣告した。

しかしながらファカルティ(というよりはプログラムディレクター)は、

”虫歯を除去して初めて修復可能か?不可能か?が判断できるわけで、現時点で修復可能か否かは判断できない”という意見のもと、この同級生に治療をさせようとしたがこの同級生が、

”時間が無駄になることはしたくない”

(例えば、カリエスクリーンアップの結果、修復不可能であればケースのリクワイアメントに含まれない)

と言って、治療を拒否したのだ。

彼はケースの到達がまだまだなので気持ちはわかるが、プログラムディレクターを敵に回すのはよろしくない。。。

結果的にプログラムディレクターは激怒し、この患者さんを私に配当した。

私は上記のように写真を撮影し、この虫歯が歯茎の中まで進行しているので予後はguardedであるということを患者さんに告げて、治療を開始した。

日本から持参したZooとラウンドバー、リトラクションコードを使用し、虫歯を除去していく。

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程なくすると露髄した。

出血は鮮血であったが、大量出血で止めようがなく結果的に抜髄となった。つまり診断はnormal pulpではなく、Asymptomatic irreversible pulpitis(症状のない不可逆性歯髄炎)だったのだ。

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頬側窩洞をグラスアイオノマーで封鎖しようとしたが、出血がひどくグラスアイオノマーが固まらない。

そこで以前、Dr. Munceがisolationに関してレクチャーしてくれたことを思い出し、キャビットとダイカルを練ってコンポジットガンに挿入し、それを用いて隔壁とした。

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抜髄なので大きく拡大していない。

MB:   .04#30

ML:    .06#25

D:        .06#30

作業長も抜髄なのでApex-1.0mmとしている。

ディレクターは私が他のレジデントのカバーをしたことを喜んでいた。

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しかし、術前の口腔内写真をみて思うことは、この患者さんはバイトが強く、ペリオの問題もあるし、カリエスのマネージメントも必要になってくる難しいケースだ。これを修復治療担当医(学生)はインレー修復+頬側のコンポジット充填という治療計画を立てているのでメールにて釘を刺しておいた。

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いわゆる疫学調査であり、アメリカでのスタディであり、医療事情が異なる日本ではもちろんこの結果はそのまま当てはめることができないだろう。

しかしながら、150万本の歯を根管治療して8年後に口腔内にそれが残っている確率は97%であるという事実は、根管治療が歯を脆くする原因になるものではないことを示している。

今でも大きく誤解があるのが、抜髄をしたがために歯が脆くなったのではないか?という迷信であるが、歯冠部の剛性が落ちていくのは虫歯でどれほどの歯質が失われていたか?であり、その後の根管治療が基本的には直接的な要因にはならない。

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しかも失敗した3%の治療の失敗の要因を分析すると、そのうちの85%は咬頭を被覆する修復を持っていなかったのである。

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このようにラスティンが抜髄した歯は(前歯を除く)基本的に咬頭を被覆しなければならない、と示唆していても合いも変わらず未だに2階で修復治療担当医達は、コンポジットレジン修復やセラミックインレー修復を行っているのである。

大きな窩洞をコンポジットやセラミックのインレーで傷跡が目立たないように修復して患者さんの負担を減らすという考えが悪いわけではない。

しかしながら結果的にこのような大きな修復物は、辺縁隆線部からクラックを発生するため、勧めることはできない。

前歯以外の歯に関しては抜髄後はクラウンか咬頭を被覆するアンレーのような修復物が必要になり、いわゆるミニマムインタベーションという治療は歯の破折を引き起こしかねないということを自覚した上で、歯科医院の受診を行うようにしましょう。

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