治療より経営?”ブラック歯科医” 急増

またしても歯科の話題が、しかもセンセーショナルな内容で取り上げられていた。

しかも今回は”ブラック歯科医”急増だという。

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どこがブラック歯科医師急増だよ、とこの記事を見て思ったがまあこの記者の方は歯科業界の方だろうか?と言うくらい保険診療の縛りに精通していらっしゃるようだ(笑)。

昔、私がこの手の1件あたりの点数を気にするばかり、”ほとんど保険点数を上げていない歯科医院を対象にした集団指導”に呼ばれたことがある。その場が免許更新の際の講話と同程度のありがたさしか感じなかったことは言うまでもない。

そこに書かれている”不都合な真実”は私が知る限り当たっていると言わざるをえない。

この不都合な真実は、昔はだいぶグレーゾーンだった。しかし、それが医療費の減少のためにグレーはやめさせると言う流れになっているのが現在の状態である。

患者さんは毎回、歯科医院から詳細な領収書をもらい何を行ったのか?チェックできる。

また我々は、レセプトを紙媒体で提出することもできなくなった。

こんなことは昔はなかった。しかし、それでもこの業界は成り立っていたのだ。

しかし、グレーをやめさせるという名の下、歯科医院の多くは究極的には選択肢を2つに迫られている。

  • 保険診療中心で、朝〜夜遅くまで安い単価で休みなく働く
  • 自由診療中心で、1日数人しか治療しない

かつてはこの中庸がスピード違反の取り締まりのような状況(いまでも?)だったのだが・・・

この二択でお金を儲けるなら、保険診療中心で、ユニットをたくさん設置し、スタッフをたくさん雇い、朝〜夜遅くまで安い単価で休みなく彼らを働かせればいいのだ。ただしこのシステムにはスタッフの結束という名の元に医院を人事を含めたマネージメントを行える優秀な経営コンサルタントが必要であることは論を待たない。スタッフは次から次へと問題を起こすからだ。私はそれに疲れて、その道を諦めた。

そんな牛丼屋みたいな状態を、ブラックだと言われたらこちらとしては立つ瀬がない。

こちらはルールに則ってできることを(本当に)一生懸命やっているまでである。

それをブラック呼ばわりされれば、私のようにもう保険ではしないと宣言する歯医者さんはこれからますます増えてくるだろう。

こと医療になると、医師・歯科医師は聖人君主を求められる。

しかし、何度も言うように我々は生きていかなければならない。

生きていくだけの最低限の利益もこのシステムでは出せないのだ。

請求書にあるパラの金属代の高さに毎月アメリカで驚愕すら覚える。

あれだけメタルインレーにするな、と指示しているにもかかわらずである。

保険診療とは、ライフラインである。USCでいうところにイマージェンシークリニックだ。

そこに”お客様至上主義”感を求められても困るのだ。

このような患者さんの希望を叶えることは、前回もお話ししたように、とてもできない。

とある、先生は保険診療でマイクロスコープを使用し、ラバーダムを使用し、Re-RCTや外科治療を行っているという。

これはもちろん、倫理的・道徳的に考えれば尊敬に値する。

しかし、一方で適正な歯内療法とその費用というものを日本に根付かせるという目標を持つ私からすればそのような医療行為は、ダンピングとなってしまう。

しかし、インプラントと違ってエンドの場合はちょっと顕微鏡をかじったくらいではなかなかマネージメントできない。

アメリカで歯内療法専門医の存在が今でも消えない理由がこれだ。

理想的な歯科医療とは、世界で誰もが認める治療法にある。そうしたガイドラインは歯内療法に関しては承知している。

しかし現状、日本の歯科医療は、もはやカオスになった。

もはやこの流れを止めることはできない。

私ごときがその潮流を止めることなんてできないのだ。

したがって、あなたは、あなたの考え方、希望次第であなたの望む歯科医療を受けることができる。あなたにはもう選択肢が無数にあるのである。

ある人は、メタルなんて(アマルガムなんて)とんでもないと言う。そんなもの入れているととんでもない病気になりますよ、と脅かし、白い歯科材料にラバーダムも使用せずにチェンジする。どんな材料にも欠点はあるのに。しかしアマルガムは未だにこちらでは保存修復で使用されているし、州の試験にも実技試験(実際に患者に2級アマルガム充填を行う)で課される。

またある人は、抜髄すると歯がもろくなって失われると信じている。したがってどれだけ自発痛があろうと、魔法の薬を使用して歯髄を保存してくれる歯科医院を懸命に探す。しかし、ペーパーでは生活歯髄療法成功の鍵は、薬剤にはないことはすでに自明である。

歯内療法は適正に行えば、インプラントと同程度の効果が有る。フィクスチャーの埋入費用は15万前後だと理解しているが、どうしてそれに対して歯内療法の費用が例えば大臼歯の抜髄だと約¥10000(の3割負担), 再治療だと約¥4000(の3割負担)なのだろうか?

この金額はUSCのGrad Endo(ロス界隈で最も治療費が安いだろう)に来る患者に話しても、”日本はクレイジーだ, それ絶対何かあるでしょう?”と言われる。

ええ、”何か”があるんですよ(笑)と答えるが、彼らにそれを説明するまでもない。

このHPでは、正しく行われる歯内療法とは何か?を説明したい。

そしてそれを保険内で行っている歯科医院を探すのもよし、他院へ行くもよし、私のところに来られてもよしである。

アメリカでは、物の値段に関してwhy?という質問は出ない。

スペシャリストは2年〜3年の間、毎日朝から晩まで(USCなら深夜まで)患者を見るのだ。

外科の症例数も私はすでに30に達した。

このまま卒業までに40はこなせそうである。

しかし、一般開業医やプライベートプラクティスではそうはいかない。

うん10年という経験豊富なファカルティにスーパーバイズされて我々は専門医となるのだ。

何が言いたいのか?といえば、専門医が行う治療というものの価値観を広めたいと思っている。

正しく行われる歯内療法とは何か?・専門医の価値観が広がれば、国民の10%は歯科に対するものの見方が変わるかもしれない。せいぜい私にできることはそれくらいまでだろう。

我々の仕事の苛烈さを面白おかしく取り上げるのはいいが、このようなことを繰り返し行っていくと私のような考えの若い先生がこれから細胞分裂するように増殖していくことを警鐘しておきたい。

それが歯科医療をよりよくするものであればいいのだが・・・

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