
バイト先での治療。
主訴は
右下奥歯の違和感があり、最近歯茎も腫れてきた…
であった。
歯内療法学的検査(2023.12.20)
#30 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#31 Cold N/A, Perc.(+), Palp,(-), BT(-), Perop Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)
PA(2023.12.20)

近心根に根尖病変が見える。
そして、ほとんど根管形成はなされていない。
ということは、再根管治療に勝機はある。
が、
Sinus tractの存在がどう影響するか?
だ。
根管の中はクリーンになっても歯根の表面についたバイオフィルムは駆逐できないからだ。
CBCT(2023.12.20)
MB


根切するには厳しい位置に#31のM根のApexはある。
穿通は必須である。
ML


MLには根尖病変と思しき透過像がそれほど顕著ではないが若干見える。
そして、生活歯髄療法の負の遺産がこの歯牙には発生している。
そう、
根管の石灰化
だ。
その歯に根尖病変ができている。
そして、Sinus tract。
この歯を根切することは容易であろうか?
といえば、
このCT画像が語っていることは、
頬側の皮質骨は相当厚いという臨床的事実だ。
それがApicoectomyを困難にしているのだろう。
できれば、非外科的な歯内療法でマネージメントしたい。
それが可能かどうか?は、
患者さんの免疫力と、
患者さんが持つ細菌の毒性と、
患者さんの細菌に対する抵抗力
等で決まるので神に委ねなければならない。

そして臨床家は
できることを全てやる
必要がある。
あなたはそれが何だか?わかりますか??
わからなければ、歯内療法という名のリングには立てないでしょう。
一生、水酸化カルシウムを貼薬する人生に行くしかないでしょう。
が、それでは何も起きないことは過去から様々な臨床家が証明しているけれども。
D


遠心根にはほぼ病変はないようだ。
ここは、再根管形成も不要と考えてもいいだろう。
ということで、この歯の治療は再根管治療だ。
そして、
M根のみを攻略すればいいとわかる。
それが、
Selective Root Canal Retreatment
である。
文献は以下だ。
Martins 2023 Outcome of selective root canal retreatment-A retrospective study
前回のイブニングセミナーでも扱った文献である。
根尖病変がある根管のみ再根管形成してどれくらいの成功率があっただろうか?
そして扱わなかった根管にどれくらいの確率で病変ができただろうか?
それを考えればこの歯の治療はどういう治療が適しているだろうか?
歯内療法学的診断(2023.12.20)
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Chronic apical abscess
Recommended Tx: Re-RCT
ということで別日に治療は行われた。
#30 Re-RCT(2024.3.26)
MLは石灰化が亢進している。
穿通するだろうか?というよりも、ProTaper SXでコロナルフレア形成できるだろうか?
ともかく、SXを使用するにはそれが入る道を作らねばらない。
短針で、スカウティングした。
その後、SXを使用したが
SXでコロナルフレア形成はできなかった。
そのような時、どうするべきだろうか?
といえば、
どうもできないのである。
つまりこの時点で、
MLは形成が不可能である
という事実がわかる。
MBのみの根管再形成に着手して根充した。
術後にPA, CBCTを撮影した。



MLは石灰化が亢進しており何もできなかった。
これで治癒するか?は神様が決めることである。

ということで次回は半年後である。
またその後の経過をお知らせしたい。